【荷役作業】労働安全衛生規則(昇降設備・保護帽)などの改正について解説
2024年6月21日
労働安全衛生規則(労衛則)の改正に伴い『昇降設備の設置』『保護帽の着用』『テールゲートリフターの操作に係る特別教育』が義務化されます。
昇降設備の設置・保護帽の着用は2023年、テールゲートリフター特別教育の実施については2024年から施工されています。労働災害を予防するためにも、荷役作業を行う企業や作業員の方は改正内容をしっかりと把握しておきましょう。
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労働安全衛生規則の改正した概要
荷役作業は、貨物をトラックなどの輸送車両へ積み込みや荷下ろしを行い、商品を出庫するまでが業務内容です。ほかにも、貨物の種類に合わせて適切な位置に保管する入庫や、倉庫内で注文内容に応じて貨物を選定するピッキングなども荷役業務に含まれます。
荷役作業の範囲は多岐にわたるほか、フォークリフトなどの産業車両を活用したり、重量のある貨物を扱ったりします。そのため、荷崩れしたり運搬機に挟まれる可能性があったりと危険が伴う仕事のひとつです。労働災害を予防するためにも、安全対策を講じたうえで業務を行うのが大切です。
トラックで荷役作業を行う際の安全対策が強化されるにあたって、労働安全衛生規則が改正されました。改正されたポイントは、主に以下の3つです。それぞれ改正された内容の詳細を詳しく解説します。
- 昇降設備の設置
- 保護帽の着用
- テールゲートリフターの操作に係る特別教育
昇降設備の設置・保護帽着用が必要になる範囲の拡大
労働安全衛生規則の改正以前では、最大積載量5t以上の車両に昇降設備の搭載と保護帽着用が必須でした。しかし今回の改正によって最大積載量2t以上の車両に対象範囲が拡大されています。
昇降設備について
昇降設備は、貨物の積み下ろしを行う際に活躍する設備のことです。労働安全衛生規則が改正により、最大積載量5t以上に加えて、2t以上5t未満の車両にも設置が必須になっています。
昇降設備には踏み台などの可搬式のほか、昇降用のステップなども該当します。また、昇降用ステップは可能な限り乗降ハンドルによる三点支持などにより、安全に昇降しやすい形式の設備を導入するのがポイントです。
2t未満の車両であっても高さ1.5mを超える作業を行う場合は、原則として昇降設備の搭載が必須な点も把握しなければいけません。
テールゲートリフターをステップとして使用する場合の注意事項
テールゲートリフターをステップとして使用する場合、昇降時に作業者を搭乗させない点も注意が必要です。テールゲートリフターは人の昇降が想定されていないため、災害に繋がる可能性があります。
車両の荷台へ乗る際にテールゲートリフターを踏み台として使用するなら、中間位置で止めたうえで荷役作業を行うのが大切です。
保護帽の着用について
保護帽は、荷役作業時に頭部の怪我や感電などを軽減するために着用が必須化されている保護具のことを指します。改正前は最大積載量5t以上の車両で着用義務がありましたが、労働安全衛生規則が改正に伴って以下の2つの条件が追加されました。
- 最大積載量2t以上5t未満の車両であっても、荷台のサイド部分が開放されているものや構造上開閉できるもの(平ボディ車やウイング車など)
- 最大積載量2t以上5t未満の車両であっても、テールゲートリフターが搭載されているもの
ただし、テールゲートリフターを使用せずに貨物を積み下ろしする際は適応されません。着用する保護帽は形式検定に合格した「墜落時保護用」の製品を使用しなければならない点も抑えて置くことが大切です。
昇降設備の設置・保護帽着用に伴う4つの注意事項
昇降設備の設置や保護帽の着用に伴い、以下4つの注意事項を把握しておくのが重要です。
- 安全な昇降設備を設置する
- 保護帽の着用が必要とされるトラックの種類
- テールゲートリフターの種類
- その他の抑えておきたい注意事項
安全な昇降設備を設置する
昇降設備を設置する際は、より安全性に配慮されたものを搭載します。例えば、車両に備えられている踏み台で突出していないものは、転落するリスクが高い傾向にあります。そのため、面積の広い踏み台で作業員が足を掛けやすいものを搭載するのがおすすめです。
また、昇降用の踏み台と昇降ハンドルを適切な高さに調整し、安定した昇り降りができるよう配慮するのも重要です。
保護帽の着用が必要とされるトラックの種類
保護帽の着用が必要になるトラックの種類は以下の4つです。
- 平ボディ車
- ウイング車
- 建機運搬車
- バン(テールゲートリフターを備えている車両)
一方で、テールゲートリフターが搭載されていないバンには保護帽の着用義務はありません。頭部の怪我を予防するためにも、保護帽が必須の車両で作業を行う際はしっかりと着用を行わなければいけません。
なお、最大積載量5t以上の車両の場合は、トラックの種類に関係なく保護帽の着用が必須です。
テールゲートリフターの種類
労働安全衛生規則では、車両の後ろに搭載された動力で駆動するリフトについては規制の対象となります。具体的には、次の4つの方式です。
- アーム式
- 垂直式
- 後部格納式
- 床下格納式
車両にテールゲートリフターを搭載するときは、規制の対象にならない方式を導入してみてください。
その他の注意事項
その他の注意すべきポイントは、主に4つあります。
1つ目は、床下格納式でサイドステッパーの隙間が生じる点です。床下格納式のサイドステッパーは、折りたたみ部分で隙間が生じやすいため、貨物ラックの車輪などが脱輪しないように注意しましょう。
2つ目は、テールゲートリフターの点検です。点検を実施する際は、安衛則第151条の75に基づいて作業を行う必要があります。動作時に異音が発生していたり、部材に亀裂や破損が生じていたりするのをチェックします。
3つ目は、ロールボックスパレットで生じる不具合の確認です。もし不具合が発生した場合は、所有者や荷主に報告したうえで適切な処置を講じましょう。
4つ目は、U字型ロールボックスパレットの使用方法です。短辺側をストッパーに当てると斜め配置となり、転倒や荷崩れに発展する可能性があります。災害を防止するためにも逸走防止措置を実施するのが大切です。
テールゲートリフター特別教育の義務化
貨物を積み下ろすときに活躍するテールゲートリフターを使用する場合、操作する作業員に対して特別教育の実施が義務付けられました。
テールゲートリフター特別教育の義務化について
テールゲートリフターの特別教育は、学科教育と実技教育に分かれています。学科教育に関しては、以下の3つの科目があります。
- テールゲートリフターに関する知識
- テールゲートリフターによる作業に関する知識
- 関係法令
学科では主にテールゲートリフターの種類や点検方法・保護具の着用方法・労働安全衛生法令中の関係条項などについて教育を受ける必要があります。時間は、各項目0.5〜2時間ほどです。
一方で実技教育は、テールゲートリフターの操作方法について学びます。テールゲートリフターの操作には、スイッチ操作やキャスターストッパー操作・昇降板の展開などが該当するのがポイントです。特別教育の実施後は、各科目の記録を作成して3年間保存する義務があります。
特別教育を一部省略できる者は?
一部、テールゲートリフターの特別教育を省略できる者も存在します。以下の3つに当てはまるのが該当者です。
- 施工日時点で6ヶ月以上の業務従事歴を有する者
- 「陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」に基づく教育を実施した者
- 陸上貨物運送事業労働災害防止協会による「ロールボックスパレット及びテールゲートリフター等による荷役作業安全講習会」を受講した者
例えば、施工日時点で6ヶ月以上の業務従事歴を有する者は、次の2つの教育時間が省略できます。通常1.5時間を要する項目が45分以上、通常で2時間を要する項目が1時間以上に省略されます。
特別教育の省略に該当する方は、必要な項目や時間などを事前にしっかりと確認しておきましょう。なお、該当者の条件によっては省略できない科目も存在します。
運転者が運転位置を離れる場合の処置が一部改正
労働安全衛生規則が改正により、運転者が運転位置を離れる場合の処置が一部改正されました。新たに改正された内容を遵守することで、車両で荷役作業を行う際の業務効率化が期待できます。
改正される原動機停止義務等の適用除外について
運転位置から離れる場合の措置が改正されるのは、走行時に必要な運転位置とテールゲートリフターなどの操作位置が異なる車両を運転するケースです。
テールゲートリフターなどを操作、または操作しようとしている場合、原動機停止義務の適応が除外されます。ブレーキを実施するなど車両の逸走防止措置は義務化が継続されているため注意が必要です。
また逸走する可能性が考えられるので、原動機もできる限り停止する必要があります。
労働安全衛生規則の改正|まとめ
より安全で快適な作業環境を確保する目的で、労働安全衛生規則は改正され続けています。労働災害防止や業務効率化を実現するために、改正内容は必ず遵守しましょう。
特に荷待ちは、トラック運転者の長時間労働や過労の原因になります。柔軟性を持って納品時間の指定対応をすることや特定の曜日に納品を集中させないこと、パレット等を活用して荷役作業の効率化を図るなど荷待ちを軽減させる取り組みが重要です。