労働災害防止対策の実施者・経費負担者の明確化の流れまとめ

2024年6月21日

建設業の労働災害は、長期的に減少傾向にあります。しかし、一人親方を含めた建設業従事者全体では年間約400名もの方が命を落としているのが現状です。

労働安全衛生法では、元請負人はもちろん下請負人への労働災害防止対策も義務化されています。労働災害防止対策にかかる経費は下請負人も負担する必要のある費用のため、請負契約を締結する際は安全対策に発生する経費も含めた金額で進める必要があります。

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労働災害防止対策の実施者・経費負担者の明確化の流れ

労働災害防止対策の重要性を意識するために、実施者と経費を負担する者を明確化する流れがあります。労働災害防止対策を実施する下請負人が具体的な安全対策を把握することで、建設現場での災害を軽減することにつながります。

元請負人による見積条件の提示

発注者から直接仕事を受注している元請負人は、見積もりの条件を提示する際に労働災害防止対策の実施者と経費を負担する者の区別を明確にする必要があります。

元請負人から仕事を依頼された下請負人が労働災害防止対策を把握しやすくすることで、災害を軽減するのが目的です。また、労働災害防止対策にかかる経費を適切に見積もれるように配慮する義務も発生します。

下請負人による労働災害防止対策に要する経費の明示

元請負人から労働災害防止対策にかかる見積もり条件を提示された下請負人は、負担分の経費に関する見積もり書を作成します。作成する際は、見積もり条件を元に適正な価格で算出することが必要です。

見積もり書の作成が完了したら、元請負人に書類を明示しましょう。

契約交渉

元請負人は、建設業法18条で定められている請負契約の当事者は対等な立場であることを踏まえて、公正な契約交渉を行う義務があります。

下請負人から明示された見積もり書が適切であれば、内容を尊重しつつ誠実に履行しなければなりません。

契約書面における明確化

請負契約の当事者である元請負人と下請負人は、契約内容を書面に記載するにあたって施工条件など労働災害防止対策の実施者と経費を負担する者の区分を確かなものにする必要があります。

労働災害防止対策において下請負人が負担する経費は、ほかの経費と明確に区別できない費用を除いて契約書面に記載しなければならないのもポイントです。

元請等の事業者が一人親方等に業務を発注する際に守るべき3つの事項

元請の事業者は労働災害防止対策のほかに、一人親方などに業務を発注する際に守るべき3つの事項があります。具体的には以下の3つです。

  1. 一人親方などの就労状況の把握
  2. 作業間の連絡と調整
  3. 新規入場者教育と独り作業などの管理

1つ目は、一人親方などの就労形態や従業員数などの把握です。業務を行う前に再下請負使用承認申請書の提出を求めることで、就労状況を適切に確認することができます。就労状況を把握することにより、現場の関係者と一人親方などとの連携がスムーズに行えるため、労働災害が発生するのを予防できるのがポイントです。

2つ目は、作業間の連絡と調整を実施することです。特にさまざまな業種が携わる工事現場では、担当である作業箇所の周辺状況を把握していないと災害に繋がる可能性があります。下請事業者が一人親方などと作業に取り掛かる場合は、事前に関係請負人と作業間の連絡と調整を実施することを指導しましょう。

3つ目は、新規入場者教育と独り作業などの管理です。一人親方は独り作業を行う頻度が多い傾向にあるため、安全ではない行為をしても注意される機会が少ないといわれています。途中から現場の入退場を行う一人親方の場合は特に注意が必要です。

必ず新規入場者教育を実施したうえで、現場ルールや安全指示などを職長に確認してから作業に取り掛かるよう指導を徹底しましょう。

一人親方等に行う3つの安全衛生対策

一人親方などに実施する安全対策は、以下の3つです。

  1. KY活動と始業前の点検
  2. 資格の取得
  3. 作業変更に伴う報連相の徹底

一人親方は作業を開始する前に、「一人KY」を実施する必要があります。災害リスクの高い作業を数値化し、特に危険な作業を重点的にリストアップします。資格の取得が必須な作業を行う際は、必ず技能講習や特別教育を実施するのもポイントです。

一人親方が関連業者への報告なしで作業を変更し、災害が発生するリスクもあります。予定していた作業内容を変更する場合は、職長に報告したうえで元請事業者の許可を得てから施工を開始します。

一人親方等が現場入場時に共有すべき事項

一人親方が現場入場時に共有するべき内容は以下の9つです。

  1. 所長方針
  2. 工事概要
  3. 施工管理体制
  4. 現場配置図
  5. 車両・通勤・交通
  6. 基本事項
  7. 現場の独自ルール
  8. 品質・環境・その他
  9. 一人親方などの遵守事項

現場内の配置図やルールを把握せずに施工を開始すると災害が発生するリスクがあるため、漏れがないよう必ず入場時に共有しましょう。一人親方が現場の責任者である所長の安全衛生方針や工事の概要・現場配置図などを把握することで、危険なエリアへの侵入を軽減できます。

また、現場の始業時間や工事用車両の駐車場・現場に出入りする際のルール・近隣協定などを共有することにより、周辺住民とのトラブルを防ぐ役割もあります。工事現場が住宅街と近い場合や通学路と現場が面しているケースなどでは特に注意が必要です。

現場内で快適に作業を行うためにも、整地整頓やタバコの吸い殻の処理方法なども共有しておきたいポイントです。

作業を請け負わせる一人親方等に対する措置の義務化

2023年4月1日より、危険かつ有害作業を行う事業者は施工する一人親方などに対して、一定の保護措置が必須化されています。危険かつ有害な作業は労働安全衛生法第22条に定められており、作業者の健康障害を防ぐために実施が義務付けられている業務のことです。

危険有害な作業を実施する場合は、事業者が設置した局所排気装置などを稼働させる必要があります。作業内容によっては特定の方法で取り組むことが義務付けられていることもあり、始業前に必ず請負人に対して具体的なやり方などを共有します。

保護帽・保護手袋・防塵マスクといった保護具の着用が必須の作業を行う際は、作業者に保護具の着用を使用する旨を伝えなければならない点も注意が必要です。

安全衛生経費の適切な支払い|まとめ

労働災害防止対策の重要性を周知するために、国土交通省では安全衛生対策項目の確認表と標準見積書に関するWGを設置しています。安全衛生対策に関する経費が下請負人まで適切に行きわたるように取り組みを進めているのが目的です。

一人親方といった下請負人の労働災害リスクを少しでも軽減するために、元請事業者は建設業法第18条を踏まえて対等な契約交渉を行いましょう。また、双方が適正な見積もりに合意したうえで、契約内容の書面化も漏れのないように実施します。

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