足場で使用するウインチとは?ホイストとの違いや種類・活用シーンを解説
2024年3月16日
足場を組み立てる際、足場材を高い場所まで、省力かつ効率的に運搬する機械がウインチです。
手動式の小型な物から船舶などで使用する大型な物まで、数多くのウインチが様々なシーンで活用されています。
本記事ではウインチとホイストの違いや種類・活用シーン・取り扱い時に必要な資格までを解説します。
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ウインチとは?
ウインチ(巻上げ機)とは、回転ドラム(巻胴)とワイヤーロープで構成された機械です。
動力により回転ドラムを駆動させて、ワイヤロープを回転ドラムに巻き付け、ワイヤロープの先に取り付け動かします。
荷物が重くても運搬距離が長くても、滑車を併用することで、物の上げ下げや横引きが簡単に行えます。
建築工事や土木工事などに使用されるイメージのウインチですが、一般家庭でも使えるコンパクトな製品もあります。ただしウインチを扱うには機種選定・運転方法・点検など、十分な知見が必要なため特別教育の受講が必須です。
ウインチとホイストの違いとは?
ウインチと似た機械のホイストですが、根本的に3つの違いがあります。
- 横移動の可否
物を上下に移動できる点は同じですが、ウインチは横移動させることもできます(ホイストは上下移動のみ)
- 機器の設置方法
ウインチは床や壁に固定して使用しますが、ホイストの場合、梁などに吊り下げて使用します
- 資格必要の有無
ウインチは能力や大きさに関係なく、ホイスト式天井クレーンは荷重によって、いずれも使用するには資格が必要です。
ただしホイストの中でも、電動ホイストとエアーホイストを扱う際には資格が不要なので覚えておきましょう。
ウインチの主な活用シーン
ウインチの活用シーンは、
- 高低差のある場所や遠方に物を運搬する時
- 手では動かせない大きさや重さの物を運搬する時
- ウインチを使う方が物を効率的に運搬できる時
が挙げられます。
例えば建物の外壁塗装を思い浮かべてください。部材を運搬する際は、地上と作業場を何度も往復することが必要です。上記のような場面でウインチを用いれば、動力で部材を運搬できるため、地上と作業場の往復をする必要がありません。
ウインチを使用することにより、作業員の体力消費を軽減したり、作業時間の短縮や作業効率の向上を図ることができます。
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ウインチの種類
ウインチは以下のように、大きく分けて5つの種類があります。
- 手動式ウインチ
- 電動式ウインチ
- エンジン式ウインチ
- 油圧式ウインチ
- 空気圧式ウインチ
それでは順番に、詳しく解説します。
手動式ウインチ
手動式ウインチは名前のとおり、人力で稼動させるウインチです。
さらにワイヤーの巻き上げ方から、以下のように2つに分けられます。
- 回転式ウインチ
- ラチェット式ウインチ
上記の2種類について、順番に解説します。
回転式ウインチ
回転式ウインチは、手でハンドルを回転させることで使用します。
ハンドルを回転させて動かすため、ラチェット式ウインチに比べて、大きな力を生み出しやすいのが特徴です。
またコンパクトなサイズで、持ち運びがしやすい製品も販売されています。
使用する場所や、用途を思い浮かべながら、ぴったりな製品を選びましょう。
ラチェット式ウインチ
ラチェット式ウインチは、レバーを前後に往復させて使用します。
回転式ウインチに比べて、レバーの動作範囲が狭いため、作業スペースが狭くても使用できる点が特徴です。
一方で同じ距離だけ物を動かすには、回転式ウインチに比べて手間と時間が必要になります。
なぜならラチェット式ウインチの方が、レバー1回あたりの操作で巻き上げられるワイヤーロープが短いため、レバーの操作回数と操作時間が必要になるからです。
電動式ウインチ
動力に電気を用いるのが、電動式ウインチです。
大きくて重たい物や、運搬距離や高低差のある場所でも使用できます。
製品によって能力に幅があり、巻上げ速度を自動調整できる製品もあります。
使用する電力は100~200Vで、荷重は130〜6,000kgが一般的です。
ウインチの中でも起動トルクは大きく、電動効率も良い点がメリットになります。
ただし電気を使うので、コンセントや発電機などを用意しなければなりません。
エンジン式ウインチ
動力にエンジンを用いるのが、エンジン式ウインチです。エンジン式ウインチに用いられる燃料には、ガソリンとディーゼルがあります。
電動式ウインチにはコンセントや発電機が必要になりますが、エンジン式ウインチには不要な点がメリットです。したがって、林業など電源の確保が難しい現場で、物を運搬する時に使用されます。
ただしエンジンの駆動音が大きいため、使用する際には周辺環境や時間帯には十分に注意しましょう。
油圧式ウインチ
動力に電気やエンジンを用いつつ、油圧を併用するのが油圧式ウインチです。
回転ドラム(巻胴)は油圧モーターにより無段階の速度制御が可能なため、正転・停止・逆転の切り替えに優れています。
サイズや使用用途に合わせて製品を選びやすい油圧式ウインチですが、定期的なメンテナンスが必要になる点には注意しましょう。
空気圧式
動力の一部にエアモーターを用いるのが、空気圧式ウインチです。電気で動く製品や、電気がない場所でも使用できるエアコンプレッサーで動く製品もあります。
またウインチの中でも、小型で軽量な製品が多いのが特徴です。
電動式やエンジン式よりも防爆性に優れているため、化学プラントや坑内作業で使用されます。
ウインチの設置方法
ウインチの設置方法は、次のとおりです。
- 堅固で傾斜がない場所を選ぶ
- 動作範囲内に障害物がないことを確認する
- アンカーボルトなどでウインチを固定する
ウインチの動作範囲には、立ち入り禁止措置や監視人を配置するのも良いでしょう。また、ウインチの設置場所が不安定であったり、傾斜があったりしてはいけません。
ワイヤーロープを巻く際に、駆動部に無理な力がかかってしまい、故障する危険があるからです。
ウインチの費用相場
作業を効率化するウインチですが、気になるのは購入費用でしょう。
ウインチの価格を左右する要因は、製品の大きさ、動力の種類や性能、使用するワイヤーロープの強度など様々です。
過酷な環境下での使用を想定したウインチであれば、特殊な仕様(防水・防塵・防爆など)が必要になるため費用はさらに上がります。
価格に幅のあるウインチですが、一般的な電動式ウインチであれば、30〜90万円と想定すれば良いでしょう。
ウインチの選び方
ウインチを選ぶに際して、重要なポイントは以下の2点です。
- 張引力・ストロークで選ぶ
- ワイヤーの巻き上げ速度で選ぶ
それでは順番に、詳しく解説します。
張引力・ストロークで選ぶ
ウインチを選ぶ際、張引力とストロークというポイントがあります。
まず張引力とは、引き上げられる最大重量です。
張引力は定格荷重や最大荷重とも表示され、数値が大きいほど重たい物を移動できます。
扱える重さには幅があり、数百kgから1tを超える製品もあります。
次にストロークの場合、揚程(ようてい)です。ストロークの数値が大きいほど、移動距離が長くても物を移動できます。
こちらも製品によって、数mから数十mと幅があります。
ワイヤーの巻き上げ速度で選ぶ
ウインチの作業効率を左右するのが、ワイヤーロープの巻き上げ速度です。速度が表示される製品もあり、値が大きいと速く巻き上げられます。
また手動式ウインチを選ぶ際には、ギア比に注目する必要があります。
ギア比とは、操作回数と巻き上げ回数の比です。
例えばギア比が4:1の場合、1回の巻き上げ回数に対して、ハンドルを4回転させる必要があります。
値が大きいほど操作回数は必要ですが、小さな力で重たい物を動かせます。
ウインチを取り扱う際は特別教育が必須
ウインチの操作は簡単に見えますが、取り扱う際は「巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育」の受講が必須です。
ウインチは物を上下左右に移動させるため、不適切に使用すれば物を落下させて破損したり、物が人に当たれば怪我をさせたりする危険性もあります。
また動作中の回転ドラムには、服や指などが巻き込まれることもあるでしょう。大きな回転ドラムであれば、怪我では済まないほど危険です。
上記のことから、ウインチの操作には適切な知見を有する必要があります。
したがってウインチを扱う際には、巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育を受講しましょう。
巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育は、各実施機関にて行われます。受講資格はなく、別の資格を有することによる免除規定などもありません。
講座の内容と時間は労働安全衛生法に基づき、下表の通り定められています。全国どこの実施団体で受講しても内容は同じで、遅刻や途中退室は厳禁なので注意が必要です。
種別 | 科目 | 時間 |
学科 | 巻上げ機に関する知識 | 3時間 |
巻上げ機の運転に必要な一般的事項に関する知識 | 2時間 | |
関係法令 | 1時間 | |
実技 | 巻上げ機の運転 | 3時間 |
荷掛け及び合図 | 1時間 | |
合計 | 10時間 |
ウインチ|まとめ
足場の組み立て時などに使用されるウインチは、省力かつ効率的に、物を上下左右に運搬できます。
ただし取り扱う際には、巻上げ機(ウインチ)の運転の業務特別教育を受講することを忘れないでください。またウインチには様々な種類があり、張引力・ストローク・巻き上げ速度から、使用シーンにあった製品を購入しましょう。