足場の組み立て作業に必要な資格一覧|取得方法や足場特別教育との違いについて解説

2024年1月30日

工事・建築現場では、作業効率・安全性の面において足場を使用する現場は多々あります。そんな足場の「組立て」「解体」の作業には資格は必須といえます。

足場からの墜落事故や足場の倒壊事故・落下物による労働災害が多く発生していることを受けて、労働安全衛生法で資格取得や教育が義務付けられています。

本記事では、足場の組み立て作業に必要な資格一覧だけでなく資格の取得方法や「足場特別教育」との違いについて解説します。

足場の組み立て作業に必要な資格一覧

労働安全衛生法で、「つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)」「張出し足場」「高さが5m以上の足場」などの組立てや解体および変更の作業を行う場合、足場の組立て等作業主任者の資格を有するもの者が作業を指揮するよう定められています。

作業を行う作業員については、「足場の組立て等作業従事者」の修了が必要です。

また関連する資格として「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」「とび技能士」の資格があります。

安全な作業を行うためには、正しい知識と技能を有する作業員の育成が必要不可欠です。

以下に、足場の組立てに必要な資格や関連する資格の取得方法などについて、詳しく解説します。

資格名
足場の組立て等作業主任者
足場の組立て等作業従事者(教育の履修のみ)
建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者
とび技能士
能力向上教育

足場の組立て等作業主任者

足場の組立て等作業主任者は、労働安全衛生法(第14条施行令第6条15号)により定められた作業主任者(国家資格)です。

「足場の組立て等作業主任者技能講習」を修了し、学科試験に合格した資格取得者となります。

「つり足場」「張出し足場」「高さが5m以上の足場」などの組立てや解体、変更の作業を行う場合、労働災害防止のため指揮監督者として「足場の組立て等作業主任者」が必要です。

必ずと言っていいほど取得しないといけない資格です。現場作業員が作業主任者としての役割を果たすための専門知識とスキルを高めるために欠かすことができません。

取得方法

「足場の組立て等作業主任者技能講習」の受講資格は経験や学歴などにより異なります。

労働安全衛生規則第83条 足場の組立て等作業主任者技能講習規程(労働省告示第109号)に基づく講習で、一般社団法人労働技能講習協会では、A~Cコースの3つのコースがあります。

各コースの受講資格については以下の通りです。

コース受講資格
Aコース・満21歳以上で足場作業に3年以上従事した者・満20歳以上で大学・高専・高校・中学で土木・建築・造船に関する学科を受講したのち2年以上足場作業に従事した者
Bコース・満20歳以上で所定の訓練を修了し足場作業に2年以上従事した者・Aコースのいずれかに該当し、とび1級、2級の技能検定に合格した者
Cコース・Aコースのいずれかに該当し、とび科の職種にかかる職業訓練指導員免許を受けた者

引用:足場の組立て等作業主任者技能講習

各コースの講習科目や講習時間・料金については以下となります。

コース講習時間(学科試験含む)税込料金
Aコース14時間13,800円
Bコース4時間10,640円
Cコース2.5時間10,130円

なお、講習会に申込む際は、該当する卒業証書・免許証の写しが必要です。実務経験には事業主の証明が必要になります。

参考:一般社団法人 労働技能講習協会

足場の組立て等作業従事者

作業従事者とは、作業主任者の指示のもと直接作業(組立てや解体など)を行う人を指します。

労働安全衛生規則(第36条‐39)が改正されたため、足場作業(足場の組立て、解体および変更の作業)に従事する者への特別教育が必要となりました(平成27年7月1日から適用)

そのため、足場の組立て等作業従事者に該当する人は「足場の組立て等作業従事者の特別教育」を受講し、足場作業についての知識や安全について理解しなければなりません。

参考:足場の組立て等作業従事者特別教育

取得方法

「足場の組立て等作業従事者特別教育」の対象者は、足場の組立てや解体などの作業などに従事する18歳以上の者になります。

講習会は「建設業労働災害防止協会の各都道府県支部」「労働技能講習協会」「Web講座」などで受講することが可能ですが費用は異なります。講習科目と講習時間は以下の通りです。修了証は原則的に即日交付されます。

講習科目時間
足場及び作業の方法に関する知識3時間
工事用設備、機械、器具、作業環境等に関する知識0.5時間
労働災害の防止に関する知識1.5時間
関係法令1時間

参考:建設業労働災害防止協会の各都道府県支部

参考:一般社団法人 労働技能講習協会

建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者

労働安全衛生法により「建築物の骨組みまたは塔であって金属製の部材で構成されるもの(高さ5m以上)の組立・解体・変更の作業」を行う場合は、「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」が必要となります。

当該作業を行うためには、「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習」を修了して国家資格を得た者を作業主任者に任命しなければなりません。

なお、「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者」は、当該作業に従事する労働者へ労働災害防止などの指揮監督を行う必要があります。

取得方法

「建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習」の受講資格と講習科目は以下の通りです。

技能講習の実施は、各都道府県で異なるため、都道府県労働基準局などへ問い合わせてください。

受講資格講習科目
・建築物の骨組みまたは塔であって、金属製の部材により構成されるものの組立て、解体、変更の作業に関する作業に3年以上従事した者
・大学、高等専門学校又は高等学校において土木又は建築に関する学科を専攻して卒業した者で、その後2年以上建築物等の鉄骨の組立て等の作業に従事した経験を有する者
・作業の方法に関する知識
・工事用設備、機械、器具、作業環境などに関する知識
・作業環境などに関する知識
・作業者に対する教育などに関する知識
・関係法令

なお、技能検定合格者(とび1級・2級)は科目免除を受けられます。

参考:建築物等の鉄骨の組立て等作業主任者技能講習 | 技能講習・各種教育のご案内 | 建災防  

とび技能士

とび技能士とは、国家資格である技能検定制度の一種で、1級、2級、3級の3つの等級があります。

「とび作業の段取り」「建設現場での仮設建設物の組立て」「高所作業」など、とび職全般の仕事をするために必須の資格です。

都道府県職業能力開発協会が実施する「とびに関する学科及び実技試験」に合格した者をいいます。なお、等級の位置づけは以下のようになります。

等級の区分技能の程度
1級上級技能者が有すべき程度
2級中級技能者が有すべき程度
3級初級技能者が有すべき程度

参考:技能検定のご案内 : 中央職業能力開発協会(JAVADA)  

取得方法

「とびに関する学科及び実技試験」の受講資格は以下の通りです。各都道府県職業能力開発協会で受験できます。

等級とび技能士の受験資格
1級7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験 ※学歴により必要な実務経験年数が異なる
2級・実務経験2年以上、または3級合格者※専門高校卒業または専修学校(大学入学資格付与課程限)卒業以上の学歴があれば、実務経験は不要
3級不問

試験は学科試験と実技試験で構成されます。

出題範囲については、厚生労働省が発行した「とび技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」に記載されているので、公式サイトから確認ください。

参考:とび(とび作業) : 中央職業能力開発協会(JAVADA)  

能力向上教育

安全管理者等労働災害の防止のための業務を行う者が「業務を的確に行う」「事業場の安全衛生水準の向上」を図るために必要です。初任時に必要な教育として受けるだけでなく、労働災害の動向や技術の進展等を踏まえた「能力の向上」を図る必要があります。

厚生労働省では、労働安全衛生法第19条の「能力向上教育指針(平成元年5月22日付け公示第1号)」に概要が記載されています。

取得方法

原則として1日とされており、講義方式・事例研究方式・討議方式等を用いて教育を受けるものとされています。

※講師・・・当該業務についての最新の知識並びに教育技法について知識及び経験を有する者
なお、それぞれの安全衛生業務従事者の教育カリキュラムが指針に示されています。

参考:能力向上教育

足場特別教育とは?

足場特別教育とは、前記した「足場の組立て等作業従事者特別教育」のことです。

建設工事で使う足場は、高所作業には欠かせないものですが、足場からの転落や墜落、足場の倒壊といった労働災害が多く発生するため、教育が義務付けられました。

つまり、足場特別教育を受講しなければ、足場の組立て、解体、変更の作業をすることができません。当該作業を行う場合、必ず受講してください。6時間で修了できます。

修了後は、足場の組立て等作業従事者としてすぐに作業を実施可能です。なお、足場材の運搬や整理などの地上での補助作業については対象にはなりません。

足場の組立て等作業主任者技能講習との違い

「足場特別教育」は、実際に作業を行う作業者のための安全衛生教育で、安全作業を行うための必要最低限の教育であり、資格ではありません。

一方で「足場の組立て等作業主任者技能講習」は、足場組立て作業を安全に指揮する者を養成する講習となります。

 「つり足場」「張出し足場」「高さが5m以上の足場」の組み立て・解体・変更作業において、作業者に指示を出すために必要な資格で、キャリアアップにつながるものです。

TB教習センター

TB教習センターとは、民間足場業界初の労働局長登録教習機関になります。足場の設置を行う足場作業主任者は、足場を使う作業者の作業姿勢を理解したうえで足場設置を計画し施工・保守点検を行うことで『安全で仕事がしやすい足場』を提供することができます。

また、その足場を使用して「木建作業主任者」が上棟を直接指揮することで、より安全で安心な上棟工事を行うことが可能です。

TB教習センターは「足場先行工法を用いた上棟工事のやり方」の技術開発を長年行ってきた株式会社東京BK足場の技術力やノウハウだけでなく最新の先行足場の構造基準や使用基準を講習することで、地域の災害防止に貢献できる取り組みを行っています。

足場の組立て作業に必要な資格まとめ

本記事では、足場の組立て作業に必要な資格を3つ、特別教育を1つ解説しました。

足場をきちんと組立てて安全に作業を行わなければ、墜落事故や落下事故・足場の倒壊事故などの労働災害を引き起こす危険性があります。

当該作業を行う場合は、法律に基づいて、必ず必要な資格を取得をすることが必要です。